まるでメヌエットを踊るように
ちょっと狭めな厨房の目の前のカウンターに案内。器を温める、麺を茹でる、奥では鶏スープを温める、ネギ油を器に入れ醤油または塩だしを加え、麺が茹で上がったら独特のフォームで湯切り、工程の合間には注文との確認を繰り返す。一連のムダのない動作に惚れ惚れ。
旨味鶏だし特製 醤油
青森・宮崎・鹿児島を香味野菜と炊合せ浅蜊などから抽出した出汁を加えたスープに三種類の醤油を掛けあわせ、仕上げに生醤油を加えた味わい。静かに、ふわりと舞い上がり軽やかでそれでいて心に響く風のような味わい。
一口、二口三口目でふと溜息。見た目は濃い目ですがそこに漂う生きていることがたまらなく嬉しい感触はまるで思いがけない贈り物のよう。
やや太めでコシがある麺は食べ進むごとにスープと馴染み、二種類のチャーシューの味わいの変化球を受け止め、シナチクの替りの自家製たけのこも通りすぎてしまうには余りにも惜しいほど。
旨味鶏だし特製 塩
愛知産〜沖縄産の四種類をブレンド、仕上げに柚子、麺は細め。醤油と違ったコンセプトを同時に表現。静かな湖面から渡り鳥が飛びだつ失うことのない光の切れ端。基本のスープは同じだけど、醤油と塩でこれほどまでコンセプトの違いが出せるなんて。こうしてママボリンケンと一緒に訪れると二種類味わえるのも何故かうれしい(写真はママボリンケンのiPhone 6sで、私の6とは随分違う画質)。
愛される=同時に愛するお店ってこうとこなのだろうか
祭りのような店内でそれとなく盛り上がってみたものの何も残らない。そんな場所にはない、隅々まで気が配られて、それでいて押し付けがましくなく穏やかで静かな空間。
季節の炊き込みご飯(ひじき、さやえんどう)もコクがあっておいしく、こうして気持ちが行き渡るのは女性ならではなのかな。女性=しかも美人が作るラーメンってこれまでなかなかありませんでしたが、心に深くしみます。
銀座「篝」、つつじヶ丘「柴崎亭」、西新宿「麺屋 翔」を初めて知った時のときめきに溢れた思い、レイモンド・カーヴァーの詩のように無駄のない彼女の動きももう一度見たく、次回は平日(定休日の木曜日以外)に訪れてみよう。西新宿(麺屋 翔)⇔銀座(篝)⇔淡路町(まつや)⇔碑文谷(生粋 花のれん)という新たな丸ノ内線ルートも、日常の移動の中に組み入れてみよう。
メヌエット。彼女はものすごく
正統的に、それを踊っていた。
なおかつ、自分が踊りたいように。
The minuet
Raymond Carver 1985
■生粋 花のれん
東京都文京区大塚3-5-4 茗荷谷ハイツ1F
11:30~21:00(日祝日 11:30~20:00)
定休日(木曜日)
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