ラーメンへの愛情がにじみ出ている名作よもう一度
伊丹十三という人にはずいぶん影響を受けてきて、高校時代に読んだ「女たちよ」は衝撃的だった。見たことのないことを身近に、しかも細かいディテールまで感じさせる文章を何度も読み返してました。その伊丹十三の監督二作目は、客の入らないラーメン屋を立て直すストーリーを縦軸に、食文化に対する温かい視線を含む13のモチーフを横軸に描いた傑作だと思う。
役所広司 と黒田福美(形のいい胸も)のエロティックな絡み、若い海女(洞口依子)から牡蠣をすするところ(牡蠣の上に血が落ちてきれい)、オムライスの正しい作り方など好きですが、中でも、ラーメンの食べ方をレクチャーする老人=大犮 柳太朗は特に印象的で、実はこれ目当てで再び観たワケ。
- 最初はまず、ラーメンをよく見ます。
- どんぶりの全容をラーメンの湯気を吸い込みながら、しみじみ鑑賞して下さい。
- スープの表面にキラキラ浮かぶ無数の油の玉、油にぬれて光る支那竹、早くも黒々と湿り始めた海苔、浮きく沈みしているネギたち。そして、何よりも、これらの具の主役でありながら、ひっそりと控えめにその身を沈めている三枚の焼豚。
- でははじめに箸の先で、ラーメンの表面をならすと言うか、なでると言うか、そういう動作をして下さい。これは、ラーメンに対する愛情の表現です。
- 次に、箸の先で焼き豚をいとおしむように突つき、おもむろにつまみ上げ、どんぶりの右上の位置に沈ませ加減に安置します。大事なことでうが、この時、心の中でわびるがごとく呟きます。『後でね…』
- さて、それでは麺から食べ始めます。
- この時、麺をすすりつつも、眼はあくまでも、しっかりと右上の焼豚に注いでおいて下さい。これも愛情のこもった視線を…。
- 次に支那竹を一本口中に入れ、しばし味わう。それを飲み込むと、今度は麺を一口。そして、その麺が口中にあるうちに、また、支那竹を一本口中に入れる。
- ここで、始めてスープをすすります。立て続けに3回。
- それからおもむろに体を起こし、「ふー」とため息をついた。
- 意を決したかのごとく、1枚目の焼豚をつまみあげ、どんぶりの内側にと〜ん、とん〜と軽くたたき付け、お汁を切ります。
- そして、至福の時を迎えたかのように満足げな顔で、焼豚をゆっくり味わいながら食べます。
まっ、こんな風にしている人はまずいないと思うけど(海外ではその気になった人もいるらしいけど)、最初にまずラーメンを見ることは変わらないなぁ。次はスープが私流ですが...。今だったら音をたててパスタを食べるように、食前に写真を撮ること=フード・ポルノについて皮肉っぽく描くかもしれない。
同級生の中華屋から始まった記憶
外でラーメンを食べた記憶は同級生の家で始まったような気がする。上京し今と違って危険な雰囲気満載の南新宿で空腹にいたたまれなくなって入ったラーメン屋は競馬中継が大きな音で響いていたのを不思議な気持ちで聞いていたことを昨日のことのように思い出す。身近にあって実は奥深いラーメンの世界観を「タンポポ」は丁寧に描いていて見終わった後にラーメンが食べたくなってしまう、いい映画(1985年公開)だ。
そうえばレンゲは初めは登場しないが、店が改装されてからは登場。。パスタもスプーンを使わないように、個人的にはレンゲを使ってラーメンを食べる(レンゲの上にのせて)のはやったことないですなぁ...。
コメント
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