それは二冊の本をきっかけだった
一冊は「若尾文子”宿命の女”なればこそ」(ワイズ出版)(表紙は「青空娘」)、もう一冊は「女優 若尾文子」(キネマ旬報社)(表紙は「越前竹人形」)を手にしてからどうも気になり、「女優 若尾文子」で紹介されている自ら選んだ11本の映画の内、本人が一番好きという「清作の妻」と長年ベストと言われている「妻は告白する 」を立て続けに観て、その魅力にすっかり取り憑かれてしまった。
プログラムピクチャーの時代
かつての日活も東映もプログラムピクチャーを量産。日活アクション、東映任侠ヤクザと各社特徴があってこの二社はずいぶん観てきたが、大映はほとんど観ていなかったため今になって若尾文子も再発見。当時のスターは小林旭と同じくらい年間に10本以上撮っていたのだから恐れ入る。また、大映トーンというのも薄っすらと分かりかけてきている。
「女優 若尾文子」には佐藤忠男氏の選んだ23本も紹介されていて、まずは自薦を最初に観て残りは佐藤忠男氏が選んだの追いかけている有様。「若尾文子”宿命の女”なればこそ」はソウルで開かれた日本映画祭に招待されたのをきっかけにインタビューを受けたとまえがきに本人が書いている。インタビューの前に観ることのなかった自身の映画を見直したとあるので、自薦の11本は本人にも思い入れがある作品ではないかと推測している。
溝口健二、小津安二郎、そして市川崑、増村保造、川島雄三らの話を観終わった映画のあとにおさらいすることが続いている。襟足の美しさ、ふと魅せる微笑み、なんといってもあの声。若尾文子には悲劇が似合うが、「婚期」で観せたコケティッシュでコメディエンヌ的な姿にも妙に惹かれてたまらない。
*祇園囃子 1953 溝口健二
*赤線地帯 1956 溝口健二
・涙 1956 川頭義郎
・日本橋 1956 市川崑
・青空娘 1957 増村保造
・蛍火 1958 五所平之助
*浮草 1959 小津安二郎
・ぼんち 1960 市川崑
・偽大学生 1960 増村保造
・婚期 1961 吉村公三郎
*女は二度生まれる 1961 川島雄三
*妻は告白する 1961 増村保造
・しとやかな獣 1962 川島雄三
*雁の寺 1962 川島雄三
*越前竹人形 1963 吉村公三郎
・女の小箱より・夫が見た 1964 増村保造
・卍 1964 増村保造
*清作の妻 1965 増村保造
*刺青 1965 増村保造
・赤い天使 1966 増村保造
*雁 1966 池平一夫
*華岡青洲の妻 1967 増村保造
・男はつらいよ 純情編 1971 山田洋次
・ある映画監督の生涯 溝口健二 1975 新藤兼人
・春の雪 2005 行定勲
*自薦11作品
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