ラーメン狂走曲(田中貴)2021.12
音楽と映画とMacを中心に始めたBLOGですが、いつのまにかラーメンBLOGにもなっていた。それほどラーメン愛があったのかといわれると、昔は仕事で出張先の鹿児島や博多の店を訪ねたり、秋葉原にしょっちゅう行っていたころにはじゃんがらラーメンに行っていたくらい。飲んだ後に〆として食べたりしていた程度。これほどまでにラーメンにこだわりを持つようになったのは、仙台荒町麺屋誠和(閉店)、西新宿麺屋翔、そして決定的だったつつじヶ丘柴崎亭と四谷荒木町一条流がんこラーメン総本家との出会いがあったから。
サニーディ・サービスのべーシストが情報誌に連載したコラムをまとめた『ラーメン狂走曲』はラーメン愛に満ちた文章(思い)が、まるで麺をすするように迫ってきて心和ませる。個性的な店主との距離感や思いやりの深さとある種のこだわりにも好感が持てる。紹介されている中で気になった店はiPhoneのメモにチェックしたほどだ。柴崎亭、一条流がんこラーメン総本家も紹介されていて、ファンとしてもうれしい。
そして、他のラーメン本やムック本と違うのが、音楽の紹介。熱心なサニーディ・サービスのファンではないが、取り上げられているアルバム(大瀧詠一、サディスティック・ミカ・バンド、セブリン・ブラウン、キンクス、エリック・アンダースン、小林旭、ロジャー・ニコルス、ビーチ・ボーイズ)とラーメンのマッチングに思わずニヤけてしまった。がんこではプラターズの「オンリー・ユー」が紹介されているが(2013.9)、店内で流れているおなじみの家元のカラオケの曲。そのコメントが「まさにオンリーな存在ある家元のカラオケ十八番」、そして特別取材の理由についてキャプションでは「一緒にカラオケに行くほどの仲だったので...」とある。もしかしてカラオケのレコーディングにも絡んでいるのだろうかと想像してみるのも楽しい。
教養としてのラーメン(青木健)2022.1
タイトルとサブタイトル(ジャンル、お店の系譜、進化するビジネス)、帯にたけしが正直ちょっと胡散臭いと思いながら読み始めた。私の場合は全ジャンルのラーメンを食べ歩き〜制覇しているわけではなく、好きな店をほぼ偶然に見つけ通い詰めているだけで、二郎系、家系、つけ麺も未体験。この本は店のガイドブックではなく、知識を積み上げた内容でもなく、どの店でも楽しめる感性を養うための内容になっている。<真の常連とは、たんに「店に頻繁に来ている人」ではなく「店のことを第一に考えて行動できる人」のこと><無愛想のようでいて客をしっかり見ている接客><コレクターや新店ハンターはほぼ、一度しか訪れない...>など忘れかけていた常識的な話も多くためになる。がんこ家元の心温まるエピソード<スマホ片手でながら食べする若者に、カリスマ店主は「調理した人間に失礼なんだよ」とやさしく説いた>も掲載。
東京ラーメン系譜学(刈部山本)2019.11
その昔、恵比寿はなんでもない山手線の駅に過ぎなかった。それでも恵比寿に通ったのは「らーめん香月」があったから。ラーメン屋には珍しいネオン管の看板、大きなL型カウンター、どんなに複雑なトッピングの組み合わせでも即座に暗記できる店員さん、大きめの丼、コクのあるスープに浮いた背脂。いまでもう一度食べたいと思わせる店だった。この本は、その香月の店主はホープ軒が屋台だった時の弟子だったと教えてくれる。ホープ軒系列、町中華とつけ麺、喜多方ラーメン〜ラーメンショップ〜札幌どさん子などのフラチャイズ・チェーン店...などの歴史が丁寧なインタービューを通じて語られる。どんな店にもそこに至るルーツがありそれを知る楽しみもある。また、店がなくなったあとも思い出させる味がある。今はなき香月のルーツを辿るため千駄ヶ谷のホープ軒に行ってみたくなった。
食べログ、ラーメンデーターベース、ムック本、ラーメン百名店、TwitterなどのSNS...無数の情報が溢れてる今。自分にとっておいしいラーメンが見つかりますようにと、この3冊は教えてくれているようだ。
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