心も温まる蒸しずし
初めて知った蒸しずしを味わいたくて帰り間際に千日前線桜川駅下車。ぽつんと取り残されたような佇まい。ガラガラと戸を引くとにこやかなおじいさんが迎い入れてくれた。四人がけテーブルがふたつ、お客夫婦連れと私。奥のテーブルで蒸しずしを作るのをぼんやりと見つめていた。
すし飯に細かく刻んだ椎茸、細切りの木耳を混ぜる。その上に刻んだ穴子と自家製エビそぼろをのせ蒸す。途中で取り出し錦糸卵をのせ二度蒸し。栗と温めていたイカをのせ海苔をかけて完成。ふんわりと寿司飯の温かさから椎茸の甘さが立ち上る。木耳の歯ざわり、穴子の香ばしさ、甘さを抑えたエビそぼろを味わうと、もはやため息しか出てこないほどのおいしさに心も身も温まる。ガリにはしめ鯖、じゅんさいも付いてきて、ちょっとうれしかった。
力加減にワザあり
好きなんだ、大阪ずし。甘辛な味付けの穴子、プリッと色鮮やかな車海老、滋味あふれる小鯛と白板昆布。三役揃った味わいに夢心地。木枠に具を並べ寿司飯を入れて押す、体ごと力を入れているように見えて、どこかで加減をしているのだろう。ご飯の粒立ちと具との合わせ目がなんとも言えず絶妙。ひとつづつつまみ、残りはお土産。早速、食べてみたけどお店で食べたのと同じ状態だったのに二度びっくり。
ご主人と色々大阪の寿司について伺う。なんでも初めの店は淀屋橋だったとか、魚は明石が多いとか、優しくも一本心の通ったお人柄についつい長居してしまった。
■寿し寅
大阪市浪速区桜川2-3-1
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