秋刀魚といえば馬生
色々な「目黒のさんま」があってその全てを聴いたワケじゃないんですが、馬生のが聴きたくなるんです。天才肌の父と弟にはさまれて、どちらかというと地味=滋味にとられるきらいがありますが、なかなかどうして、馬生のいやらしくない「東京人=江戸っ子らしさ」「落語らしさ」も、一度好きになると抜けられなくなります。
ちょっとわがままなお殿様が遠出で出会った秋刀魚。ちょっとひと息付いている回りの景色の描写ものんびりとしてとてもステキ。秋晴れの遠足で高い空を知ったことなど懐かしく思い出してしまいそうです。そして、秋刀魚の香ばしい風がお殿様に届く描写。いいんだなぁ...。墨絵のような世界に、色がじんわりと加わり、その香りすらも感じるんだなぁ。
「十代目金原亭馬生 噺と酒と江戸の粋」(石井徹也編著)の中に、馬生の川柳が紹介されていました。
何となく流し眼でみる癖があり
耳許に香り残して女立ち
こちらで紹介した荒唐無稽さも大好きですが、こういう色っぽさにも惹かれますね。
人間っていうのはそこに何かがあるとさほどお腹がすかない
なにもなくなっちゃったとなると途端にどか〜んとすいてきます
天気に恵まれた昨夜、開催の是非に物議を呼んだ、第33回浦安花火大会を玄関先で見ていました。一時間も風に吹かれていると体も冷えてきました。花火もいいけどお腹がすいてきましたね。
朝早起きして市場で探したのが、水揚げされたばかりの秋刀魚。あとは焼くだけにしてあったので、早速焼いて食しました。う〜ん、今年初のさんま、身も厚くこってり、香ばしい皮、苦みのあるわた。レモンを軽く搾り、辛味大根おろしと合わせると極上ですね。頭っからかぶりついて、お皿には骨と尻尾だけしか残っていませんでした...。
こうして季節を知る。
なんて豊かなことなんだろうかと...。
小津監督の遺作で岩下志麻が艶やかな『秋刀魚の味』とかヒチコックのユーモア溢れるシャーリー・マクレーンが(デビュー作)コケティッシュな『ハリーの災難』とか観たくなります。
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