どんどん南下していった
ヴァン・ダイク・パークス『Discover America』(1972)を聴いてから音楽嗜好がどんどん南に向かっていった。76年にジャマイカの海岸で録音された波の音を集めたアルバムは、トロピカルな雰囲気にしてあった友人宅で部屋でぼんやり聴いていた。浅井慎平さんの写真が大好きでキャノンのカレンダーにもなっていた写真集『海流の中の島々』を翌年に手に入れて、南の島への思いをつのらせていた。あとがきにはとても印象的な話としてタブー・コンボのことがあり、確か吉祥寺のジョージアで「New York City」を収録したアルバムを見つけていた。
カリブ海の音楽が根底に抱えている暗さの感覚
先週〜今週と棚の整理。LP棚に忘れていた『Surf Break From Jamaica』を発見。すっかり忘れていたが河村要助さんが解説を書いてらして、最後の方でまとめている内容に、思うことがありやや長めの引用をしておこう。
...僕が聴くのはどうしても好きなトロピカルのラテン音楽という事におちつかせてもらう。それもプエルトリコやヴェネズエラの地方のバンドで、トランペットかトロンボーン2〜3本という最もシンプルな編成、とこか垢抜けないローカル色を持った連中の演奏が、波の音にぴったりだ。(略)とりわけラテン音楽について、陽気で明るく楽しい音楽という皮相な形容が通用しているが、こうして波の切れ目に聴こえて来る音楽から伝わって来るのは、カリブ海の音楽が根底に抱えている暗さの感覚のような気がするのだ。
76年ごろだと、プエルトリコならフランキー・ルイスが参加する前のソルシオン、ヴェネスエラならディメンション・ラテーナあたりになるだろうか。決してりっぱではない演奏でも、音の隙間からどうしても滲み出てくるあの感じに心惹かれ、棚の整理も忘れて聴き入ってしまった。「カリブ海の音楽が根底に抱えている暗さの感覚」という部分に惹かれてこれらの音楽に45年以上付き合うことになってしまうとは、当時からは想像できなかった。
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