人生は五十一から 1998.1.1〜2003.12.25
本音を申せば 2004.1.1〜2021.7.8
高校生で初めて手にした『日本の喜劇人』以来の大ファンで、物事を考える基準や映画の見方を教わってきた小林信彦さん。週刊文春の名コラムは、毎週楽しみに読んでいたし、定期購入していたときは切り抜き〜年に一冊単行本になり〜三年後に文庫本になるというサイクルをもう20年以上続けている。単行本は図書館で借り一年分をまとめて振り返り、文庫分は購入し再確認。喜びや悲しみ怒りは生々しく覚えているが、三年後には記憶を回復させるために機能するパターンを続けていた。
『人生は五十一から』のあとがきには、
日本人は<変わってない>という感想を持ちます。大衆は権力者につねに騙され、大新聞とテレビが権力者に寄りそう、という在り方には、現在の身近のことを書きながら戦中・戦後の記憶を串刺しにする方法でしか対抗できません。
最終回では、
テレビもマスコミもたじろいでしまったから、<五輪とワクチン不足>なるスローガンがまかり通った。オリンピックを強行するための幼稚な作戦だが、かつての東條内閣のようなものに牛耳られた過去を持つ国民は、心ある人々の反対にもかかわらず、不満ながら足を止めた。(中略)政治家は五輪の必要だけをもちだすので、世の中バランスが狂っている。とにかく、オリンピックとコロナ禍(※)だけに専念すれば、平和な世の中がくると思っているらしい。
コラム内で使われている<コロナ禍>という言い回し、報道〜その受売りの人たちが無造作に使っているが、私個人的には好きではない。禍(わざわい)は人的ミスによる凶事という意味もあるし禍々しいという言い方を思い浮かべてしまう。まぁ、これまでの政府・官僚のミスで事態を未だに計画的に収束できないままオリンピックに向かっているのは禍(わざわい)と言い換えるなら納得もできるが。
話は戻って、4年前に脳梗塞で中断し〜生還してからいつかこの日が来るだろうと感じていたが『本音を申せば』が終了してしまうのがとても残念だ。『決定版 日本の喜劇人』で一つの区切りがついたのだろうか。でも、このクロニクル的エッセイに多くを学んでいただけに、心から感謝したい気持ちでいっぱいだ。
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