はっぴいえんどへの複雑な気持ち
洋楽少年だった頃の私、はっぴいえんどへやや複雑な気分もあった。さほど熱心なファンでもなく、ようやく3枚目でラストのアルバムでその良さを実感し、かえって、ソロになってからの方が本気で好きだった。
●松本隆
どうも「です」「ます」的な歌詞に馴染めなく、ちょっとねっちょりとした話しぶりもあまり好きではない。それでも、「微熱少年」「風街」というキーワードには心惹かれてアンビバレントな感情。高校時代に初めて麻布に行ったことを今でも思い出し赤面。
●鈴木茂
真似して同じ色のストラトを買ったほどの憧れのギタリスト。リトル・フィートと組んだ1stアルバムの衝撃は今でも変わらない。音色、フレーズのすべてに未だに惹かれている。
●大瀧詠一
独特の節回しとノベルティー加減、無条件で大好き。音楽以外の知識も色々と参考になり、小林信彦氏との関係も興味深かった。
そして細野さん
はっぴえんど時代も含めて、力を抜いた柔らかい細野さんの声が大好き。ソロ以降の、キャラメルママ〜トロピカルダンディあたりまで熱心に聴いていた。ただ、サルサを聴き始めた影響もあり、ティン・パン・アレーのアルバム(1975.11)あたりから興味がなくなり、YMOやアンビエントもほとんどスルー。ところがニュー・オリンズ好きの友人に久保田麻琴とのユニット、ハリー&マック『Road to Louisiana』(1999)を熱心に勧められてから、気になる存在として再浮上。以降『FLYING SAUCER 1047』(2007)、『HosoNova』(2011)、『Heavenly Music』(2013)、『Vu Ja Dé』(2017)、『Hochono House』(2019)を熱心に聴いてきている。
細野さんの本あれこれ
これまで録音術とか映画の本を紹介してきたけど、図書館で色々借りてとっかえひっかえ読んでいる。『細野観光』は50年間をクロニクルにまとめてあり、写真も多く使用楽器もたっぷり掲載されて興味深い。『録音術』は以前紹介済なのでそちらを参考にしてもらうとして、今気がついたのが鈴木惣一朗さんの存在。
二人の対話集
師弟関係に近い二人の対話集がことのほか深い内容でじっくり読んでしまった。『分福茶釜』(2008)、『とまっていた時計がまたうごきはじめた』(2014)。
今の人間のあり方ってきついと思うの。点でしか存在しないから、もろになんでも自分でかぶっちゃうんだよね
CDだけじゃダメなんだよ。空気に音を出さなきゃ、響かせなきゃいけない
ミュージシャンは「引き際」を考え出すと死んじゃうんだよ(中略)ぼくみたいにのんべんだらりとやっていく場合もあるし、突然切れちゃう場合もあるだよね(加藤和彦さんについて=『エゴ〜加藤和彦、加藤和彦を語る』の読書後)
意思が強いが気が弱い、心は広いのに部屋が狭い
ほんわかしていたり、はぐらかしたりながら、こうして本質を捉えた部分にドキッとしてしまう。『とまっていた時計〜』は対談時期が東日本大震災後の世の中のあり方について言及があり、一層奥深い。これは今のコロナの状況とよく似ている。個人的には「父の死」には身につまされてしまった。2冊共各章末に克明な注釈が付いているけど、これは若い読者への配慮なんだろう。
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