抜かりのなさから生まれるもの
格子に囲まれた店は、ここいらが江戸時代に木挽町と呼ばれていたことを忍ばせる。コロナ対策のため行列は作らず整理券を配布し決められた時間に戻るというシステムは理にかなっていると思う。長い間の課題店だっただけに混雑が予想されてたが30分待ちとはありがたかった。時間つぶしに近所を徘徊していたら京橋の名店がこんなに近いことを知って、これはまたの機会に紹介したい。
なんという美しさ
店主の松本靖さんはフレンチの出身。まるで最高級コンソメのような清涼感あふれるスープはかえしなし。がんこでいえば純正100になるがベクトルが全く違う。決め手にプロシュートを選んでくるところも新鮮な驚き。深みがあって、温もりも感じる静かな湖畔のような佇まい。
ペッパーキャビアという胡椒をふりかけたバラチャーシューの香りと味わい。スープに溶け出すと和風仕立てのコンソメが変化していく楽しみも味わえるのも流石だ。そして、麺は「浅草開化楼」製の細ストレート。これ以上の組み合わせが思いつかないほど見事に調和している。
何年振りだろう、いつもの店以外で、食後に出された加賀の水出しほうじ茶を口に含みながら、食べ終わったあとにしばし呆然としてしまったのは。なるべく早くその秘密をもう一度味わいと思いながら、挨拶をして店を出る気持ち良さ。
■銀座 八五(はちごう)
東京都中央区銀座3-14-2 第一はなぶさビル1F
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