プラスチック・ソウル時代のボウイ
ジギーを封印したボウイの次はベルリン時代...と思い込んでいたけど、その前にプラスチック・ソウル時代があったことに気がついた。アメリカツアーをきっかけとしてU.S.へ急接近。憧れと幻滅の入り混じったソウルへの傾向。
喧嘩別れをしていたトニー・ヴィスコンティを迎えてのシグマ・スタジオ(フィラデルフィア)での『Young American』の録音。そのまんまシグマ・サウンドにならないところもボウイらしい。リズムセクションはウィーリー・ウィークス&アンディ・ニューマークと鉄壁、アルトサックスは当時無名のデビッド・サンボーン。
その後それぞれ引っ張りだこのスタジオミュージシャンへ成長するがこの目利きのよさはどうだろうか。ウィーリー・ウィークス&アンディ・ニューマークのリズムセクションを見つけたのはジョージ・ハリスンだと思っていたけどデヴィッド・ボウイの方が先なのかな。コーラスはやはり無名だったルーサー・ヴァンドロス=カルロス・アルマーが連れてきた。
ウィリー・ウィークス
ドニー・ハサウェイ(Live 72)
ジョージ・ハリスン(Dark Hose 74、Extra Texture 75、Thirty Three & 1/3 76、George Harrison 79)
アンディ・ニューマーク
スライ&ファミリーストン(Fresh 73)
ジョージ・ハリスン(Dark Hose 74、Extra Texture 75、George Harrison 79)
アルバム全体は独特の浮遊感に包みこまれボウイの節回しの旨さに心躍るばかり。メローなソウルにとどまるかと思いきや、ジョン・レノンに出会ったことが刺激になったN.Y.ヒット・ファクトリーでのセッションで生まれた「Fame」ではさらに進んだヘビーファンクを生み出した。図太いファンクは今後のボウイのバックを支えるカルロス・アルマー、デニス・デイヴィスらの貢献が大きい。
元々カルロス・アルマーが遊びで弾いていたリフがベースらしいけど(または、「Foot Stomping」のリフ)本家のJBよりファンキーに聴こえてしまうほどだ。そのJBは刺激を受けてほとんどコピーのような「Hot (I Need To Be Loved, Loved, Loved, Loved」を発表したがヒットせず=おそらくこの位ならちょこっと出来るゼというシャレのような感じともとれるけど内心悔しかっただろうな。それでも、ソウル/R&Bチャートでヒット。それだから、ジョージ・クリントン(パーラメント)「P-Funk(Wants to Get Funked UP」でもボウイのこと気にしているような歌詞が出てきたんだろうな。
続く『STATION TO STATION』は新解釈としてのボウイ・ファンクとして最重要アルバム。D.A.M.トリオ(カルロス・アルマー、ジョージ・マレー、デニス・デイヴィス)によるバックも鉄壁。ゲストにブルース・スプリングスティーンのロイ・ビタンのピアノも印象的だ。こうして短期間でフィリー・ソウル〜ヘビーファンク〜ファンクをベースにした重圧なロックへとサウンドを変化させるボウイ。
同時期のライブ『Live Nassau Coliseum '76』はリードギターをステイシー・へイデンに替え、シンプルでギミック無しのサウンドがグイグイ迫り眩しい当時の集大成的なライブ。憧れのソウルトレイン出演は白人としては初めてだっただけに緊張で内心ヒヤヒヤしている姿も印象的だったが、ここでは激しく才気迫るほど。いつの時代でもボウイはカッコイイけどこの時代もまた素晴らしく、ベルリン時代への橋渡し的ライブ音源としても個人的にベストだ。
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