馬生を聞くしあわせ
偉大な親父と天才肌の弟に挟まれていささか分が悪いように思えてくる馬生ですが、いやいやどっこい素晴らしいです。何がいいいかというと、一言では難しいのですが、どことなく柔らかでまったりとしているかと思うと突然豹変する。そして、何事もなかったように元に戻る。肩肘を張らずにこちらもリラックスしている間にサゲになる。江戸から明治の東京の街に心も体もすっと持っていかれてしまうような不思議な味わいがあります。
余白のある穏やかな調子
昨年11月にリリースされたCD/DVDボックスを年末年始に聞き改めて馬生の素晴らしさを噛み締めています。時折、志ん生、ふと志ん朝。親子兄弟だもの、残り香のように感じて二度うれしくなる、そんな場面もあります。噺にはあまりこだわりもなかったようにも聞き幅広く楽しめますが、ボックスの中の相撲噺「佐野山」「花筏」が特に好き。実はこの二つの噺のまくらがほぼ一緒で、初めて聞いたとき間違えてもう一度iPhoneをセットしたのではないかと思ったほど。土俵際の力士や行司のしぐさをおもしろおかしく表現しています。行司が貫禄を示すために四股名を紹介するあたり何度聞いても抱腹絶倒。あっさりと「そんなにがむしゃらに生きてもしょうがねぇ」言われてしまいそうで、気持ちも楽になります。
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