開演前の会場内の会話によって無秩序に広がるざわめきが(後ろの席の男が大声で同伴の女性にジャズのうんちくを語っていて耳障り)、天井から三本、ステージ上から三本の照明のみの空間になった時に、張り詰めた静寂に包まれました。ステージ上には、ピアノ、ベース、ドラムセットが、まるで精密に作られたような模型のように見えてきました。息を詰めて、キース・ジャレット、ゲイリー・ピーコック、ジャック・ディジョネットを待っていました。やがて、割れんばかりの拍手と共に三人が登場し、それぞれの位置に座り、やはり静寂。キースの小さくも力強いワンノートでコンサートが始まりました。思えば初来日から25年にもなる三人から、音だけではなく魂を紡ぐようなその会話。いいようのない響きを感じていました。スタンダードの新解釈だけではなく、広くジャンルを超えた音楽。クラシック、ソウル、ヨーロッパの源音楽、現代音楽、フリージャズ...私にとっても見知らぬ音楽的要素をひとつひとつ理解はしていませんが、おそらくジャズのフォーマットを超えた音とリズムが、心までも振動させてしまいました。
鍵盤に水平になるまで身をかがめ初めの音が自分自身に湧いてくるのを待っているかのようなキース。それを、静かに見つける二人。今夜はあまり呻きが少ないような気もしましたが、時折、よじるように中腰から立ち上がるキース。時折、リズムがどのようになっているか分からなくなるほどの展開も、ディジョネットのハイハットの小さな音や、ピーコックのベースの低音部分を知ることによって、徐々に捕まえることが出来ました。
ソロと違って、各ソロでの拍手。これでいいのだろうと思いましたが、キースのソロからピーコックのソロで移るときのニュアンスも知りたい私にとっては、ソロ単位での拍手は不要でした。会場を出ると、人山が出来ているので気になり覗くと「当夜のセットリスト」が掲示されていました。Twitterで見かけたセットリストは、こうして公にされていたんですね。ジャズのコンサートでは当たり前なのかなぁ...。アンコール含めて二時間(休憩20分除く)のコンサートは、様々な余韻を残しそうでした。
帰りは、無法地帯の渋谷(久しぶりにセンター街付近を歩きましたが、その荒廃ぶりに呆れてしまう)を抜けてPARCO駐車場へ。そこから、僅か30分で帰宅。ピンクの照明に包まれた東京タワー、レインボーブリッジから眺める夜景が美しかったです。一方、このような夜景のために原発で作られた電気を使っているなんてこともシニカルに感じていました。
Hey, I can only vaguely understanding what you wrote through Google translation. But I was at this very concert as well. It was a memorable night for me too, and I am glad that someone shares the same feeling. Thanks!
投稿情報: David Zhang | 2010/10/11 02:41
kazpapaさん
今年リリースの『Jasmin』は秋の長夜にもぴったりですのでお勧めです。
今年、今までで最も聴いているアルバムです。テーマは「会話」ではないかと...
http://borinquen.typepad.jp/blog/2010/05/song-of-today-62.html
投稿情報: Borinquen | 2010/10/05 12:31
超豪華メンバーでのライブだったんですね。キース・ジャレット2枚くらいしか聞いたことありませんが、静寂を音に変えるような、なにか高尚なイメージですよね。
最近センター街割と歩く機会があるんで、嫌いじゃなくなってきた・・・そんな自分が怖い?!
投稿情報: kaz papa | 2010/10/05 10:58