亡くなってから4年度に届けられた物語
シチリアの小さな村から始まり、クリーヴランドで散髪屋を経て音楽業界に至るまでの話にワクワクしながら二日間で一気によんでしまった。ニック・デカロ、フィル・スペクター、サム・クックとの出会い、リバティー時代(1965)から始まるレニー・ワロンカーとランディ・ニューマンとの友情、A&M時代(1966-1968、1978-1979)でのマック・レベナック(ドクター・ジョン)との出会い。ブルーサム(1970-1974 )の立ち上げとクルセーダーズとの出会い。黄金のワーナー時代(1975-1978、1979-1990)。GRP時代(1995-2017)のダイアナ・クラールとの飛躍。
どちらかというとポップス寄りと思っていたけど、基本にジャズがあり、ポップスにジャズの要素を持ち込んだ、または新しいジャズの姿を描いたプロデューサーとして位置関係がよく分かる。プロデュース時はコントロールルームではなくスタジオ内でまとめていくコーディネイトタイプだったこともよく分かる。様々な制約(時間、スタジオ、レコード会社、ミュージシャン同士のエゴ)はこうしたことでクリアされていったんだろう。
個人的にはブルーサム〜初期のワーナー時代のアルバムが大好きだったので、マイケル・フランクスを発見しサウンドにクルセイダーズのメンバーを採用した閃き、ジョージ・ベンソンの『Breezin'』録音中のハラハラドキドキ、クラウス・オーガーマンのストリングス依頼、ジョビンやジョアン・ジルベルトとの出会い、初期ワーナー時代最後のビル・エヴァンスの制作は二度読んでしまった。
ベン・シドランの丁寧な語り口と読みやすい翻訳がまず素晴らしい。イマドキ風で各章見出し下にQRコードが付いていて、ベン・シドランが理解を深めるために選曲したSpotifyプレイリストがあること。多面的に読めることがこの物語を深いものにしている。
レコード会社は大手資本に吸収され、70年代まで保っていたエッセンスも失い、CDも売れない時代。今度、トミー・リピューマのようなプロデューサーは出てくるのだろうか...とか、日本独自編集の『Tommy LiPuma Wors』も久しぶりに取り出して、ここ数日間色々考えていた。
■亡くなったことを知って書いたBLOG
https://borinquen.typepad.jp/blog/2017/03/tommy_lipuma.html
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