一年前の約束
もう一度ここに一家揃って訪れよう。そう考えて始めたのが松庵貯金。昨年担当していただいた舞さんの笑顔のお出迎えから始まるゆったりとした時間のながれ。うん、そうなんです、これなんです、ここ一年間待っていたことは。売茶翁のお菓子とお茶を楽しんだ後に部屋に案内されて、まず驚くのが部屋から一望に見える松島の姿。刻々と暮れゆくのを静かに見守りながら、まずは露天風呂へ。鳥の音、お湯のぶくぶく、誰もいない湯船に浸かりながら、ふわぁ〜っとため息。
松島や三陸の新鮮な食材を個室で味わう
周りに気を使わない個室で一年を振り返る。大きな声で騒いだりもせず淡々と過ごす夕べ。シャンパンの差し入れもあってちょっとサプライズ。立入酒のわしが國から、伯楽星(純米吟醸=大崎新澤醸造店)、錦屋(特別純米吟醸=栗原 金の井酒造)への流れもとても料理に合っていました。
立入酒 わしが國
前菜 牡蠣プリン、師走の香
吸椀 河豚白子寄せ蕪摺り流し
造里 本鮪、ぼっけ、帆立、活穴子薄造り
しのぎ 焼胡麻豆腐
焼物 牛ロース調理長お任せ焼き
口直し 松島トマト
温物 鱶鰭と仙台芹の小鍋仕立て
食事 松島穴子の炊き御飯
止椀 味噌仕立て
甘味 メローゴールド
どれもおいしく楽しめましたが、香ばしい香りの焼胡麻豆腐は特に印象的で焼き物が出てくる直前のまるで画面展開のキューのような役目もしていました。松島は穴子の産地で、我が家にもある「親切なかまどさん」で炊かれた穴子ご飯はとてもおいしかったです。食べきれないのはおにぎりにしてもらいました。デザートのスプーンやフォークを置く受け紙は、スタッフによる切り絵(うさぎ)。こんな細かいところまで気を配っているんだなぁとため息。
厚い雲から差し込んで来る朝日で湾も輝きだして
朝日に照らされた松島湾がその表情も刻々と変えていく姿をぼんやりと見ていると朝ご飯の時間。まずは、席に着いてからにがりを切る宮城県産宮城白目の手作り豆腐の優しい味わい。昨夜は着物がよく似合う舞さんでしたが、朝は真っ白いシャツと笑顔が、まるで朝の光のよう。私は和食でしたが、みんなは毎日オーブンで焼き上げるパンのお膳。今回のお料理の写真はα7で撮っていますが、まるで家庭画報のような雰囲気(撮影はSatoさん)。そういえば、ガラス食器はスガハラ(ヨーグルト用のブルーベリー入れ=垂れない、ヨーグルト=皿と一体化)でした。
ママボリンケンの実家から僅か20分の「松島佐勘 松庵」で過ごす穏やかな時は、割りとしんどかった一年をゆっくりと振り返るのにちょうどいい佇まいでした。普段は贅沢をせずに過ごし、年に何度かは変えることのできない情景や人の思いを手に取ることができる旅=移動で、静寂と落ち着きを手に入れる。無理やり意識をほかに向けず、自然と自分に向かう。次にどこに向かうべきかフツフツと考え始めている。
■松島佐勘 松庵
http://www.shoan-umine.com
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