ジェリー・ウェクスラーが考えたこと
アレサ・フランクリンが、71/5/3-5の三日間のフィルモア・ウエストで行った公演の完全収録盤をようやく聴くことができました。数年前にライノから限定でリリース後、あっという間に売り切れ。幻のアルバムになりそうでしたが、日本版でワーナーダイレクトからリリースされていました。初日からこなれて来る二日目、そして完成度の高い最終日までの流れをじっくりと楽しむことができます。ロックの数々の名ライブを生んだフィルモアですが、その場所にソウルを紹介しようとする時にジェリー・ウェクスラーが考えたことは、スタジオミュージシャンの起用だったようです。本来、ライブの場合はツアーバンドでのぞむことがほとんどですが、スタジオと同じクォリティーで勝負したことが、新しいグルーブを生んだのでしょう。日増しにタイトでぶっといサウンドに変化して行きます。
勿論、会場を包み込むような、あけっぴろげでおおらかなアレサの歌声も素晴らしいです
キング・カーティス、メンフィスホーン、コーネル・デュプリー、バーナード・パーティ、ビリー・プレストンらの鉄壁なバック。ヒット曲で会場が暖まった頃の、Make It With You(ブレッド)〜Don't Play That Song(ベン・E・キング)〜You're All I Need To Get By(マービン・ゲイ&タミー・テレル)、この三曲のカバーがたまりません。自由自在なメロディーとリズムに身を任せていく(コーネル・デュプリー最高)高揚感、そして一変してデュープなブルーズ(コーネル・デュプリー最高)...。最終日には、レイ・チャールズも客席から飛び入り参加で19分のジャムを繰り広げます。ダニー・ハザウェイのライブの「ゲットー」のロングヴァージョンのような気がしてなりません。誰にも媚びなく自身の音楽を信じている姿に心打たれます。この三日間のライブからアレサとキング・カーティスの名ライブが生まれたのは言うまでもないことです。
得ることと失うものと
本来ブラック・ミュージックはチリトン・サーキットの中で熟成していましたが、こうして他の世界へ活動範囲を広げていくと、得ることと失うものが共存したと思いますが、この時代は両者がとてもいいバランスにあったのでしょうね。アレサのこのライブを聴いた後に、マイルスのフィルモアライブを続けて聴いてしまいました。同じような時期にサルサもバリオから世界に羽ばたいていたのかと思うと、時代性も感じてしまいます。そして、規模、内容、時期、志など勿論違いますが、日韓で活動中のKARA(問題は解決するのだろうか?)やSNSD(昨日来日)のことも合せて考えてしまいました。
コメント
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