大泉洋
うるさく演技過剰で苦手なタイプだった。連ドラのダメな父役(「まれ」)も最後までしっくりこなかった。ところが、福山雅治のモノマネ「洋ちゃんさぁ〜」あたりから個人的な高感度がUPし、TVに出てれば気にかける存在になっていた。二枚目風の三枚目が、三枚目風の二枚目を本人の目の前でモノマネをするのがいつみてもおかしい。
劇団ひとり
熱狂的なKARAの大ファンとして初めて知ったのは2010年頃。日本でブレイクする前にインターネットでKARAやSNSDを密かに追いかけていた私にとって、ああ日本の芸能人にもKARAのファンがいるんだと驚きだった。ちょっと横柄に感じる喋り方が鼻につき、それ以降は疎遠になっていた。
ビートたけし
浅草時代は知らず、ブレイク後のオールナイトニッポンも聞いたこともなく、首を捻る動作が気になり、監督した映画も熱心に観ていることもない存在。どうも、タモリ、さんま、所は苦手な部類。
浅草
私が上京した70年代なかばには、すでに浅草文化はすたれ寂しい場所だった。オールナイトでクレイジーキャッツの映画を観た映画館は、館内がすえた感じもして、観終わって鈍い朝の光でくすんで見えたことをいまでも覚えている。父方の親戚は浅草近辺に集まり、お墓も浅草にあるがめったに行かない場所。浅草から始まった芸能、下町文化といわれてもピンとこない。
浅草キッド
たけしの書いた本は未読。たけしと師匠の幻の深見千三郎との物語を劇団ひとりが監督、Netflixで独占配信。場所は浅草、浅草フランス座。私の喜劇人の知識は小林信彦さんの「日本の喜劇人」からがほとんどだが、小林信彦さん自身は戦後は浅草よりも新宿フランス座にシフトしていて、深見千三郎の記述はたけしの部分のみ。萩本欽一の師匠でもあったので『小林信彦 萩本欽一 ふたりの笑タイム』という対談集にも触れられていない(小林信彦さんのポリシーとして見ていないものは批評しないためだと思われる)。
無名だったたけしが師匠と出会い、それを乗り越えていくドラマに浅草を取り巻く世界、浅草から飛びだってTVに向かう芸人たちと取り残された者たち、これらを丁寧に描く劇団ひとりの力量にまず驚いた。そして、師匠役の大泉洋の素晴らしさ。ほとんど映像資料がなく劇団ひとりがたけしから聞き取った内容で作り上げた人物像が放つ
俺のとこでやりてぇならな
笑われるんじゃねえぞ。笑わせるんだよ
というリアリティーに心惹かれてしまった。これは今の芸人と呼ばれてふんぞり返っている連中に噛み締めてもらいたい一言だ。最後に満客に向かってステージに向かう姿にイーストウッドの『ジャージー・ボーイズ』を思い浮かべうるっとしてしまった。
キャスティングも素晴らしく、Wヒロインともいえる、ストリッパー&歌手の門脇麦のいじらしさ、師匠の妻役の鈴木保奈美のさらりとしながらも情の深さ。短い出番ながら存在感のある風間杜夫。なかでも特筆すべきなのが、最後まで分からなかったビートきよし役の土屋伸之。始めは存在感の薄い相棒ながら、実漫才シーンで発揮する底力に驚くばかり。特殊メイクで再現した現在の姿、毒っけあふれるたけしを演じた柳楽優弥も忘れられない(前出の「まれ」で大泉洋と共演)。
こうして優れた映画がNetflix独占配信という形で世に出ることの意義を考えてしまう。Apple Music、Spotifyなどのサブスクリプションも含めて色々と考えさせられてしまうことも多かった。浅草フランス座は現在は浅草フランス座演芸場東洋館として存在しているので(2000年以降ストリップはなし)来年にでも、おいしそうなラーメン店を探した後にゆったりと演芸でも楽しみたいと思っている。
■【インタビュー】劇団ひとり「浅草キッド」映画化への使命感 ビートたけしの反応はどうだった?
https://eiga.com/news/20211209/13/
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