チカーノ・ソウルへの誤解
チカーノ・ソウルってラテン・ロックでチャカポコしたサウンドばかりだろうと長い間誤解していた。偶然知ったロイヤル・ジェスターズのコンピレーション(2015)を聴いて、あれれちょっと違うなと感じを受け、好きでわりと聴きこんでいた50〜60年代のソウルにも似たコーラスグループやドゥーワップからスモーキー・ロビンソンにも似たスイートなソウル感覚にすっかり痺れてしまったのが昨年の秋頃。カバージャケットのパーティー、インナーのキュートな姿にもぞっこん一目惚れだった。
ライナーを読んでみると、1958年に結成され、テハーノ向けに英語歌詞でシングルをリリース。基本メンバーはマイク・ペドラーサ、オスカー・ローソン、ヘンリー・エルナンデス、ルイス・エスカランテでディマ・ガルサ(デマスⅢ)とジョー・ジャマも参加していた。モンゴ・サンタマリア、ウィリー・ボボのカバー、モータウン風、シカゴ風の曲(㉒㉓㉔結構気に入っている)...と60年代〜70年代前半までのサウンドの遍歴も楽しい。他にないかどうかと『CHICANO SOUL San Antonio's Westside Sound』シリーズ1〜3(2004)も探して、内ジャケのシングル盤レーベルを見ながらあれこれ想像していた。
チカーノ・ソウル(ルーベン・モリーナ著/宮田信訳)
サブタイトルに「アメリカ文化に秘められたもうひとつの音楽史」とある『チカーノ・ソウル』のリリースを知ったの宮田信さんFaceBook。自由が丘代官山の記念イベントには行けなかったが無事に入手。思えば、『CHICANO SOUL San Antonio's Westside Sound』シリーズは著者のルーベン・モリーナ氏の選曲、日本語ライナーは宮田信さんだったのだ。
1.パイオニアたち
2.サンアントニオ
3.南カルフォルニア
4.テキサス
5.フェニックス&アルバカーキ
6.ブラウン・プライド
全6章には貴重な写真(ライブ、レーベル、アルバム、フライヤーなど)満載。INDEXも便利で読みやすくその地域地域の歴史と特徴が丁寧に説明されているある種バイブル的な豪華本。2月に手に入れて未だに1.パイオニアたち〜2.サンアントニオ迄しかきちんと読めていないが、何故英語でアメリカの黒人音楽を演っているのか、ヒスパニックと黒人のコミュニティ、タフでハードな生活と裏返しの音楽、社会情勢の影響など、色々な疑問も解けてきそうだ。
サンアントニオだけでも物凄いのに他の地域ではどうなのだろうかと、どう踏み出すか色々考えてしまっている。と同時にこの本で描かれている世界は今はどのように変わらず、また変化しているのかも気になっている。
30年以上前、在日ラティーノ&ラティーナが週末集まるBBQによく行っていた。持参したサルサのCDをかけながら見様見真似DJもどきもウケてていたっけ。「ハポネスなのに私達よりも詳しいの?」とよく言われてしまったことも。22時頃からの盛り上がりが2時頃になると、ストンと落ち、決まって甘々のラテンポップス(例えばJeanette)が流れてくることを思い出した。屈託のない笑顔が消えて疲労感のある顔色。これまで騒ぎすぎた裏返し以上のものを感じていた。朝が明け、海岸に出て陽の光を浴びる頃には解散の合図。
私の手にしたチカーノ・ソウルも同じような感覚を持っているのだろうか、とふとそんな事を思い出している。
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