「(なじるように)また祭ですか」
「お前(おまい)、そういう言い方はおよしなさい、ええ?いいじゃないか、あたしが楽しみにしているもんだから」
「いえ、いくらお好きだからってねえ、なにもそんなァ…お祭りを見に佃島まで行くことァないじゃありませんか」
「行ったっていいでしょう、ええ?あたしゃお祭り好きなんだから、ねえ?もうぼう見て歩いてるけれども、あたしゃァ佃祭というのが一番好きだなァ、なあっ。神輿を担いで海へ入って行く、まことにこのねェ、見ても体が動いて(いごいて)くるななァ、ええ?うん。お前(おまい)にはわからなんだよ。とにかく行ってくるから」
「(冷淡に)そうですか。じゃどうぞおいでなさいましな、ええ?(突き放すように)おいでンなったらいいでしょつ。お祭が白粉つけて待っているでしょうから」
「…もう器量のいい女の人(しと)が色が黒い、浅黒いというのァまことにねえ、いいもんです、ええ。色の黒い分だけちょいと、仇っぽく見せますからなあ、へえ。器量がよくなきゃいけませんですよ。えー、ただ黒いてェのはいけません。へえ、ねえ。いやッハッハッハッ。あたしも他人(しと)のかみさんつかまいてくだらないことを言っているもんだ…」
あはは、まくらが長くなってしまいましたが、志ん朝さんの『佃祭』はいつ聴いても引き込まれてしまいます。小間物屋の次郎兵衛さんのように、女性に好かれ、如才なく、人当たりが柔らかで、しかし粘り気が少ない、そんな人柄でありたいですナ。ということで、佃島の天安。つい買いすぎてしまいますが、鰹と浅蜊の佃煮。おにぎりの具でもよし、帰宅直後のプファ〜にもよし。甘じょっぱさもちょうど良くって無性に食べたくなるんです。
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