今のようにりっぱな映画よりも70年代のブライアン・デ・パーマー
ヒチコックの亜流だとか言われがちのブライアン・デ・パーマーの世界ですが、なかなかどうしてクセになります。知り合いに貸しっぱなしだった『悪魔のシスターズ』『殺しのドレス』が戻ってきて、その辺の時代のブライアン・デ・パーマーをもう一度観てみようと、いつもの悪い癖がでてしまいました。一人の人間が多重の人格を持つ。互いに干渉し互いの影響を持ち、一人ではない感触。二人の肉体が分離されて、肉体は片方だけ残ったが人格は二つに。または、元々ひとつの肉体に二つの人格が芽生えた。前者の例が『悪魔のシスターズ』、後者が『殺しのドレス』。エロティックでセクシーなカメラワークと悲劇的な最後。本当にクセになる作品達です。
カルトムービーの『ファントム・オブ・パラダイス』
36年前の映画とは思えないほどの斬新さでいまでも輝いています。カーペンターズの曲を作ったり、ロジャー・ニコルズとのコンビでいわゆるソフトロックの先駆けになったポール・ウィリアムズが怪演しています。勿論、劇中で使われている曲も自身が作り歌っています。『ファントム・オブ・パラダイス』を改めて見返してみてデイビッド・リンチ『マルホランド・ドライブ』を思い出してしまいました。
『殺しのドレス』同様印象的なシャワーシーンで始まるのが『キャリー』。サイキックな能力を持った少女の悲劇。『ツイン・ピークス』にも出演して癖のある演技をしていたパイパー・ローリーの怪演、意地悪でコケティッシュなナンシー・アレン、ダンスシーンでの回転するカメラ。CGを駆使しなくてもここまで出来るいい例かと思います。そして、何度見ても鳥肌が立つラストシーン。役者のオーディションが『スター・ウォーズ』と同時にされていたなんて、すっかり忘れていました。いい映画というのは時代が流れに洗われてもう一度その良さが現れて来るんだなぁ...と実感しています。
昨年亡くなった今野雄二ってブライアン・デ・パーマーが大好きだったなぁ...なんてことも思い出しています。『デ・パーマ・カット』も翻訳しています(キネマ旬報社 1989年-ローラン・ブーズロウ著)。この本は記述が1989年で終わっていますが、是非続編を出して欲しいです。また、今野雄二がミュージック・マガジンに連載していた映画紹介はまとまった本になるのでしょうか。いい企画だっただけに是非実現して欲しいものです。
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