巡り巡ってアイズレー
ダニー・ハザウェイの素晴らしさを伝えるためにアルバムを配って歩いていたキャロル・キングのことはは有名な話。マービン・ゲイにインスパイアされた「Brother, Brother」を含む『Music』『Fantasy』はニュー・ソウルと呼ばれた時代性にいち早く反応したアルバムでした。バックもデビッド・T・ウォーカーを含めて腕利きの連中。ホント、よく聴きました。そして、アイズレーがカバーした「Brother, Brother」は、オリジナル以上に濃厚な世界を描いています。
60年代のソウルはバックやプロデューサーは白人、パフォーマンスは黒人。それらがとてもバランスよく表現されていたような気がしますが、公民権運動~ベトナム戦争を経過すると、そのようなコミュニケーションも薄くなってしまいました。それでも、互いにリスペクトしあい、アイズレーのこの二枚のアルバムもとても味わい深い内容となりました。TNeckを立上げて軌道に乗りつつある時期に、世の中のざわめきに反応した彼らですが、『Givin' It Back』ではオールカバー、しかも白人のロックをアイズレー風に解釈。山小屋を背景に生ギターと一緒にポーズ。ガットギターなのがちょっと惜しいけど、これを見たらソウルのアルバムと判断しにくいのではないでしょうか。二曲も取り上げられたスティービン・スティルスの「Love The One You're With」は、オリジナル以上で、今聴いても謙遜のない内容です。続く『Brother, Brother, Brother』はキャロル・キングを三曲選ぶなど、お互いの交流が目に浮かびます。「It's Too Late」はサビになるまで分からないほどのアイズレーの世界が続きます。マービン・ゲイ、カーティス、JB、スライは明日のソウルを切り開いた重要な存在ですが、アイズレーも別の角度でソウルの多面性を見せてくれていたんですね。音楽は周辺の影響(社会的、音楽的、人種的な)を受けながら前に進んでいっているという見本のようなアルバムです。
電車の中で、朝一ブログ、読みごたえ有ったっちゃ。
投稿情報: Gambo | 2010/12/21 08:23