どちらかというと、ポールは悪者だった...
高校受験の一週間前にハンター・デイビスの書いたビートルズの伝記を読み始めて止まらなくなりました。出会うべくして出会った四人の物語を知るにはこの本しかなかった時代の話です。解散劇の話を断片的に聞き知ったりすると、なんとなくポールって悪い奴ではないか、と思い込んでみたり。幼い頃の話なので許してください。解散後は、どちらかというとジョージのファンだった私は「Another Day」は大好きだったけど、それ以降は真剣にポールを聴いてはいませんでした。
後に『ポール・マッカートニーとアヴァンギャルド・ミュージック ビートルズを進化させた実験精神』という本で、メンバーで一番サイケデリックな奴はポールだったかもしれないと思ったり、どんな楽器でも上手く弾けてしまうマルチ・プレイヤーに驚嘆したり、気になる存在でもありました。如何せん、私は1972年以降はベアズヴィル周辺やバーバンク周辺の音楽に傾倒して、1975年以降はニューオリンズを通り越してカリブ海まで南下。N.Y.に一旦戻りサルサを知ってしまうので、1975年以降のポールも空白になってしまいました。
きっかけはひょんなところから
再見したジョージの追悼コンサートで「Something」を歌う姿が心残りだったという下地。ママボリンケンのランニングウェアがステラ・マッカートニーだったりして、なんか最近気になっているところに『Band On The Run』のボックスセットの知らせ。72年リリースといえば、ヒットチャートのメインはグラム・ロックだったのでは。ビートルズのメンバーも力作をリリース。そして、ポールの大傑作。といえども、冒頭の理由で真剣に向き合うことのなかったアルバムのひとつでした。あくまでもバンドにこだわるポールでしたが、ナイジェリアでの録音と聞いてメンバーがしり込みして脱退。リンダとデニー・レインと三人で条件の悪いナイジェリア、ラゴスに行ってしまう。6ヵ月後ロンドンに戻り完成されたアルバムはキラキラしたポップセンス満載の内容になりました。
ああ、こんなにステキだったのね
タイトルの「Band On The Run」は改めて聴くと三部構成、印象的なギターのリフで始まるのが一部。リズムが転調してポールのドラムとギターのリフが冴える二部。大胆なストリングスに導かれる三部、そしてアコースティックギターも(もしかして十二弦)心地よい。ほとんどこれらをポールがほぼ一人で演っていたなんて。トッド・ラングレンの場合は独特の揺れもあったりして微笑ましいですが、ポールの場合は完璧。他にもいい曲がたくさんあって、マニアックで豪華な装丁の本と一緒に楽しんでいると時間が経つのも忘れそうです。 こうして、生きているうちに自分の企画としてアーカイブを整理できるなんて、ポールは幸運な人だと思う。60年代も、70年代も、80年代も体験していない層の人も、こうして丁寧なアーカイブを体験できるなんて、ホント幸せ。勿論、ロックオヤジも。そうそう、ジャケットにジェームズ・コバーン、クリストファー・リーがいたなんて、初めて知りました。
反面、ZONOさんに教えてもらった「Aweditorium」のことひどく気にしています。音楽が届かないのは流通が悪いからだ、もしくは流通に乗せるために音楽が悪くなる。それらの逆手にとった「」の世界。これにも一本取られてしまいました。iPadをきっかけとして、このように優れたコンテンツによって届く音楽には明日への光すらも感じます。反面、Blu-ray導入後、ニール・ヤングのボックスや近日発売予定のジョージのボックスも気にしている矛盾している私もいるワケですが...
High Resolution 24bit 96kHz limited and unlimited audio versions
ビートルズのリマスター盤作成時に、マスターテープの精密な再現をするためにノイズ除去、ピーク・リミッターの使用を押さえようとしたそうです。その流れで、このボックスもできているらしいですが、なんとハイレゾ24bit/96kHz高画質音源がダウンロードできます。しかも、un-limited版、limited版の二種類。MacBook Pro17のスピーカーでも明らかに違いが分かるほどの音です。このスーパーデラックスエディションにはダウンロードのチケットが付いていますが、これが目当ての人も多いのではないかな。
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