最初からあったもの
チャールズ・ライトの「結局のところ、最後まで残るのは、最初からあったものなのだ」という言葉をふと思い出していたのは、「ORDERLINE 中原亜梨沙下図集 刊行記念展」を開催していたホテル内の小さな会場だった。画集『ゆうなれば花』を手にしてからすっかりその魅力に取り憑かれて5年。待望の個展が開催を知って、5月の霧深い西新宿へ。
下図の線
下図というものはあくまでも下図であって、上に塗り込められるものの前の姿と思っていた。初めて見ることが出来た下図の力強い線に目が止まった。目の輪郭線、二重瞼、上瞼、下瞼、涙袋、じっと見つめる強い視線。きりっとした小鼻、ふんわりとした唇、くっきりとした背景。これらの力強い線が導く形のことがもっと知りたくなった。
制作過程
ご本人がいらしたので、ほんの僅かな時間の中『下図集』も交え、制作過程について丁寧に教えていただく幸運に恵まれた。クラフト紙に下図を描いた後、麻紙〜チャコペーパー〜下図を重ね下図をなぞる。力強い線が黒く光っているのは、なぞるために4Hの鉛筆を使っているため。麻紙に転写された線に水干絵の具で絵付け。
線=境界線が導く浮かび上がる形を間近に知ることができて、とても素晴らしい時間を過ごすことができ多幸感に包まれていた。『下図集』には幼い頃からの話から「BORDERLINE」への思いが記されている。
帰宅後、暗くなってきた部屋で画集『ゆうなれば花』と交互に見比べていた。
コメント
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