鮮やかなグラデーション、ぐぐっと迫る波
穏やかな早春も混じる冷ややかな海風、どこまでも続くと思わせる風紋、人気(ひとけ)のない海辺、自分たちが付ける足跡だけが残る砂浜。真っ青な空が濃い緑の水平線に溶け込み、波打ち際には淡い青色に煌いていく。せりがった途端に崩れ落ち白い泡の塊になる波。まだちょっと早いかな、と慌てて引き返すと新しいうねりに引き込まれていく。いつ始まったかも、いつ終わるかも、誰も知らない自然の営みを前にしてなにができるのだろうか。無力感よりも新しい息吹が生まれてくる予感を感じながら、湿った砂浜に座り込み望遠レンズで繰り返される波を見ていました。
住むならリゾート感覚ネ、でもそれは遠いこだまのよう
国道筋にはためくのぼりとこじゃれたカフェの連なり。正反対に思えるけど、圧倒的な自然の前には、どちらも余計なものに思えます。普通の人が普通に暮らしている場所に突然訪れる。うしろめたさも感じ、それでもなにか惹かれるものがあり、再訪を繰り返す。私たちのとって千倉はそんな思いのある場所になっています。夏になれば海水浴客も訪れ賑わうが、それが終われば海風と波の音だけの元の場所に戻ってしまう。遠投げをしている釣り人、昆布を収穫している夫婦。黙々とした姿も何故かしっとりと風景に溶け込んでいます。道端に咲く小さな花を見つめていると、突然に、自転車集団が目の前を通り過ぎる(後で知ったんですがサイクリングクラブのツアー客)。一瞬にして過ぎ去っていく姿を見送ると、再び静かな風と波の音。椅子を置いて何時間もその場にいられる季節ももうすぐです。
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